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author kiyama <e185758@ie.u-ryukyu.ac.jp>
date Fri, 16 Feb 2024 08:36:07 +0900
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\chapter{学生が管理する教育研究用情報システム}
情報システムが普及した社会におけるIT人材の需要は増加している.一般企業でのITの活用や情報システムの導入を推進する人材は2030年には最大78万人不足すると予測され, 特にサイバーセキュリティ対策を講じる情報セキュリティ人材やAIやビッグデータを専門とする高い技術力を持つ先端IT人材の不足が問題として挙げられている.\cite{ITdemand}
また,情報工学系の学生については「情報専門学科カリキュラム J17」で定義されているように多岐にわたる技術が求められている.\cite{J17}

琉球大学工学科知能情報コースでは,1990年頃から,幅広い基礎学力と実践力および問題解決能力を備えた人材の養成を目指し教育研究用情報システムの自主管理・更新を行ってきた.\cite{firstsystem,secondsystem,thirdsystem,fourthsystem}これらのシステムは指導教員と有志の学生からなるシステム管理チームが管理している.
これらの取り組みでは,情報専門学科カリキュラムJ17の情報システム領域や情報セキュリティの領域で定められている知識やスキルを身につける為に行われている.
先行研究\cite{system}でもシステムリプレースを活用した実践的教育への活用の有用性が示されている.
既存システムの問題点を明らかにし,それらを改善する為の新システムを構築した.構築したシステムは問題点を解決していることを示し,システムの利用者アンケートからも新システムが高い評価を受けている事がわかる.また,管理者である学生らのアンケートからもシステムリプレイスを用いた実践的教育の有用性が示されている.
これらの事からより多くの生徒がシステム管理活動に参加する事で実践教育の場として活かせる事が可能である.また利用者である学生が管理活動に参加する事で自信が実現したいサービスを構築する事ができ,研究活動としても有効である.

2024年現在に利用している教育研究用情報システムは2020年度の10月に更新されたものであり,2022年3月までシステム管理チームが主体となってシステムの管理を行ってきた.
しかし,システム管理チームに参加する学生が少数である事から継続的なシステム管理への参加を目的として2022年4月から演習科目のテーマにシステム管理活動を追加した.
また演習科目では学科システムが複雑で受講者の生徒には敷居が高い事やコマンドラインでのシステム操作に慣れていない問題があった.

本研究では演習科目でのシステム管理チームの取り組みとチャットツールを用いたシステム管理手法,受講生へのアンケートを用いた本取り組みの有用性について報告する.



\section{システム管理チームの構成と活動}
システム管理チームは2024年1月時点で指導教員2名,技術職員1名,学生3名の6名から構成されている.
本チームの主な活動を下記に示す.\\

% \begin{quote}
%     \begin{itemize}
% 		\item 週一回のオンラインミーティング
% 		\item 教育研究用情報システムの運用,保守
% 		\item システム利用者からの問い合わせ対応
% 		\item インシデント対応
% 		\item インストール大会の主催
%     \end{itemize}
% \end{quote}

{\bf 週一回のオンラインミーティング}
\\
システム管理チームは一週間に一度のミーティングを行う.ミーティングは,一週間の進捗や報告,緊急度の高い要件について話し合われ,要件の割り振りや今後の対応などについて決定される.進捗の進みが良くない場合や難易度の高い要件については共同で作業を進めることによって日々の要件を達成している.\\

{\bf 教育研究用情報システムの運用,保守}
\\
教育研究用情報システムの運用・保守においては,複数の重要な取り組みが行われている.システム上で稼働しているサービスのアップデートが定期的に行われており,これによりシステムの安定性と効率が維持されている.次に,より堅牢な類似サービスへの乗り換えを実施しており,使用中のサービスに対して機能的に類似しつつもセキュリティが強化されたサービスへの移行を通じて,システムの全体的なセキュリティを強化している.また,基幹サービスのデータについては,重要なデータ損失を防ぐために定期的にバックアップが取得されており,万が一の事態が発生した際にも迅速に復旧が可能である.
\\

{\bf 教育研究用情報システムの更新}
\\
教育研究用情報システムでは老朽化改善や最新技術導入の為,5年に一度システム更新を行なっている.旧システムの問題点を洗い出し,必要な技術要件を満たすラックサーバーやL2,L3Switchなどの物理機器の購入,設置を行なっている.
その後,セットアップや基幹システムの移行,新規構築を行う.
\\

{\bf システム利用者からの問い合わせ対応}
\\
学内イベントの為の無線設置や障害が発生してサービスが利用できない際の対応,また提供するサービスを利用する際に管理者の監査が必要なものが存在する.それらは基本手の空いているメンバーが対応している.
\\

{\bf インストール大会の主催}\\
新入学生に向けたパソコンのセットアップや授業で使用するツールの構築,学科システムが提供するサービスを利用する為のサポートを行っている.
基本的に本コース生が使用するパソコンは琉球大学生活共同組合が指定するものであり,生協からパソコンを注文する.パソコンの受け取りは履修登録開始前に工学部一号館で行われる.そこでアカウントの作成や学科システムが提供するシステムの登録などを行う.
その中で,システム管理チームは毎年先生の要望から資料の更新や新しいチップに対応したインストール手順の作成と当日の説明を行っている.図\ref{fig:install}

\begin{figure}[htpb]
    \begin{center}
        \includegraphics[clip,width=11.0cm]{fig/install.jpg}
    \caption{インストール大会の様子.}
    \label{fig:install}
    \end{center}
\end{figure}

\newpage

\section{システム管理チームの情報共有}
以下にシステム管理チームで利用している情報共有のツールとそれらの使用方法を示す.\\

{\bf オンラインミーティング}\\
システム管理チームは週に一回オンラインミーティングを行っており,2020年のコロナ禍以降からzoomを使用して実施されている.
ここでは一週間の作業内容の共有や今後の方針ついての決定,緊急な依頼の対応を行っている.
\\

{\bf Scrapbox}\\
システム管理チームではプロジェクト,ドキュメントの管理に情報共有サービスであるScrapboxを使用している.
プロジェクト管理ではハッシュタグやアイコン記法を使用しタスクの優先度,進捗率,作業者を管理しており,作業者はそのタスクでやることの要約と実際の作業手順を記載する.
また,ドキュメント管理では学科で管理しているシステムの情報や定期的に行う作業についての手順がまとめられている.
これらの記事はScrapbox内の検索ボックスから探せる.記事の見出しだけでなく記事内の文章も検索対象となっている.また記事をスクロールすると関連ページや使用している同一単語が書かれている記事の一覧が表示される.
図\ref{fig:scrapbox}にScrapBoxの画像を示す.

\begin{figure}[htpb]
    \begin{center}
        \includegraphics[clip,width=16.0cm]{fig/scrapbox.png}
    \caption{システム管理チームで利用しているscrapbox.}
    \label{fig:scrapbox}
    \end{center}
\end{figure}


{\bf Mattermost}\\
Mattermostはオープンソースのチャットツールである.システム管理チームだけでなく,知能情報コースに通う教員や学生にも幅広く利用されている.このツールは,授業連絡,イベント告知,就職活動に関する情報共有,そして個人間の会話など大学生活の中で日常的に活用されている.特に,システム管理チームにおいては,ミーティング外での情報共有やチーム内での質問,さらにはシステム利用者からの依頼に対応するために使用している.
\\

\begin{figure}[htpb]
    \begin{center}
        \includegraphics[clip,width=16.0cm]{fig/mattermost.png}
    \caption{システム管理チームで利用しているMattermost.}
    \label{fig:mattermost}
    \end{center}
\end{figure}

{\bf Slack}\\
SlackはMattermostと同様チャットツールである.Mattermostはセルフホスティングサービスである事から配信しているサーバーに異常が発生した場合に使用不可となる.そこでMattermostが使用できない場合にはSlackにて状況共有や復旧に向けたやり取りを行なっている.

\section{論文の構成}
本論文の構成は以下の通りになる.

\begin{description}
	\item[1章] 本研究の研究背景および目的を述べる
	\item[2章] 本研究で必要な技術概要を述べる
	\item[3章] 現行の教育研究用システムについて述べる
	\item[4章] 演習科目のテーマでの活動とアンケートを用いた考察について述べる
	\item[5章] チャットシステムを利用したシステム管理手法について述べる
	\item[6章] 本研究の総括と今後の課題について述べる
\end{description}